ダウン症候群の赤ちゃんでは、かぜにかかると重症化することがあります1)
かぜの主な原因はウイルス感染によるもので、その他、細菌などにより引き起こされます。ウイルスではインフルエンザウイルスが有名ですが、乳幼児ではRSウイルスによる呼吸器感染症が多く、1歳までに半数以上、2歳までにほぼ全員がRSウイルスに感染します2)。
とくに、ダウン症候群の赤ちゃんがRSウイルスにかかると、急激に重症化して、細気管支炎や肺炎などを引き起こすことがあります3)。重症化すると喘鳴(ぜんめい)(ゼイゼイ、ヒューヒューとした呼吸)が出たり、呼吸が速くなったりします。呼吸困難や無呼吸の状態がみられたり、入院による治療が必要となったりする場合もあります。また、心疾患の症状(チアノーゼや心不全)が悪化するおそれもあります。
現在、RSウイルス感染症に対する有効な治療薬はなく、かかってしまったら対症療法を行うことになります。そのため、しっかりとした予防を心がけ、感染の機会を減らすことが大切になります。
かぜやウイルス性胃腸炎を予防するには?
RSウイルスなどのかぜのウイルスは、咳、くしゃみ、鼻水、痰などから感染します。家族全員が協力して、できるだけウイルスと接触しないような環境をつくることが重要ですので、次のことを心がけましょう。
かぜをひいている人との
接触を避ける
かぜをひいている家族は、家庭でもマスクをする、部屋を分けるなど、赤ちゃんにうつさないようにしましょう。
大人にとっては軽いかぜでも、赤ちゃんにとっては重い症状を引き起こすことがあります。
身の回りのものの清潔を
心がける
赤ちゃんが触ったり、口に入れたりするものは、アルコールティッシュで消毒するなどして、常に清潔にしましょう。
また、オムツの処理をきっちりしましょう。
人ごみを避ける
病原体であるウイルスを寄せ付けないようにしましょう。
手洗い、うがいの励行
外出後は、家族を含め、手洗いうがいを励行し、からだを清潔に保つようにしましょう。
予防接種を受けましょう
乳幼児期は一般的に免疫システムの発達が十分でなく、とくにダウン症候群児では、呼吸器系の特徴や免疫のはたらきが弱いことから、予防接種を受けたほうがよいでしょう。
国で推奨している接種スケジュールがありますが、季節やそのときの流行などで、受ける予防接種の順番が変わることがあります。予防接種の種類やタイミングは、主治医と相談して決めましょう。
予防接種法で定められた定期接種のほかに、任意で受けることのできる予防接種もあります。副作用の問題や接種回数の多さなどから、進んで受けるのをためらっている方も多いかもしれません。
しかし、ダウン症候群児は感染症にかかると重症化するリスクが高いため、任意接種も積極的に受けることがすすめられます。
以下の予防接種スケジュールを確認しましょう。
参考:
乳幼児予防接種スケジュール
感染症にはそれぞれ罹患しやすい年齢および流行期間があります。その感染を未然に防ぐために予防接種スケジュールが作成されております。接種対象期間内に、健康な時期を選んでワクチン接種を完了していくことが重要です。しかし、予防接種制度は随時、改正されますので、接種の際はかかりつけ医にご相談ください。
- 注)
DPT-IPV 4回接種、DPT 4回接種+IPV 4回接種から選択可能。なお、原則として同一の種類のワクチンを必要回数接種する。
- 不活化…
不活化ワクチン。
- 生…
生ワクチン。注射生ワクチン接種後、次の注射生ワクチン接種までは27日以上の間隔をあける。
- 1)
Bloemers BL, et al. Pediatrics. 2007; 120(4): e1076-e1081.
- 2)
Glezen WP, et al. AM J Dis Child. 1986; 140(6): 543-546.
- 3)
一般社団法人 日本新生児成育医学会 編. 新生児学テキスト. メディカ出版. 平成30年12月第1版